魚住は、モモ先輩がリーダーをする“フィッシュアウト”というバンドのメンバーと付き合っている。
ふたりが結ばれるまでに何があったのか、俺は少しだけだけど知っているんだ。
だから、先輩にも魚住にも幸せになってもらいたいと思っている。
「実はさ、魚住に千早のこと相談に乗ってもらっていたんだ」
「わ、わたしのこと…?」
「そ。どーやったら千早が落ちてくれるかー、ってな」
「……!」
魚住も俺も、お互いの今の恋人に片思いしていた頃に相談乗ったり乗られたりした。
こういうときどうするか、どうすべきか、等々。
俺のアドバイスが効いたかはわからないが、魚住のアドバイスはなかなか的確で、そのおかげもあり今やあの千早が俺の彼女だ。
「…魚住さんと友達になれるかな」
「うーん、千早とタイプは違う子だし、どうだろうなぁ」
「ひっどーい! 絶対仲良くなってみせるんだから!!」
陸上部でしごかれて養った負けず嫌いがこんなところで発揮されるなんてな。
女子こえ~!
「セン、」
千早の俺の名前を呼ぶ声がしたのと同時に肩に掛かる少しの重み。
それから、頬には柔らかな感触。
それは静かに触れた千早の唇だった。
「──…え?」
千早が自分の意思でしてくれた初めてのキスに俺は戸惑いを隠せない。
「一方的に勘違いしちゃったから、その、おわび」
「あ、ああ。そうか、ありがとう」
こうして、俺の浮気疑惑は晴らされたわけだけれど。
最後の最後にこんな素敵な特典が付いてくるなら、千早を怒らせるのも悪くはないかもしれないな。
【浮気じゃないもん(20141002~20141014):END】
(おまけ更新はもう少し続きます)

