「前に、容姿のことでガキの頃にいじめられてたって言ったろ? ずっと昔のことだけど、引きずっててさ。
俺、かわいい顔してんじゃん? だから“茜”になって、自分を隠してたんだ」
『自分で言うかよ!』という突っ込みは、口から飛び出る直前に飲み込んだ。
「自分を隠すのに必死だったから、尚更藤村に惹かれた。自分のためじゃなく誰かのために自分を変えようとしてる藤村に」
「雨森…」
「だますようなことして、ごめんな」
雨森と茜ちゃんが同一人物だと知ったときは確かに、だまされたって思った。
でもこれも“乙女街道”の上にある障害であり難関であったのかもしれないって思えるんだ。
きっと乙女街道の最終地点にはずっと前から雨森がスタンバイしてて。
雨森の胸に飛び込む(物理的には不可能だけど)ための準備でもあったのかな、なんて。

