そうだ。そうだよ。
幼い頃、酒と女に溺れて母親を裏切った父親を見て、“男はそういう生き物”だと刷り込まれたわたし。
そのせいで抱えることになった男性アレルギー。
心の底で男を忌み嫌うわたしが一番、そういう目でしか男を見て来なかったんだ。
無意味な先入観や偏見に捕らわれて、無関係な男まで色のついたフィルターで見てきたんだ。
雨森のことも、知らず知らずのうちに…。
「告白されたんだよね? 千早ちゃんは彼のこと、どう思っているの?」
「好きかは、わからない。でもね、そいつのことを考えると時々ドキドキするの」
あ、だじゃれ。
…じゃなくて!
これじゃ、わたしが雨森のことを好きみたいじゃん!
わたしが好きなのは陸だもん。
陸、陸、陸…。
「葉月さ、ずっと疑問に思ってたんだけど、千早ちゃんって名取くんにドキドキしたことある?
千早ちゃんからそういうことって聞いたことないなあ」
「…あるよ。多分、きっと、おそらく」
あれ…?
わたしが好きなのは陸なはずなのに、自信を持って『ドキドキするよ』と言えないわたしがいる。

