「キャッ! …んっ」




しゃがんでわたしと視線の高さを同じにした彼は、わたしの腕を引っ張ると、再び唇にキスを落とした。


感情をぶつけ、噛みつくようなキス。




──キ モ チ ワ ル イ 。



「イヤッ!」




パシンと乾いた音が部屋に響いてハッと我にかえる。


目の前には左の頬を赤くした彼。


彼の頬を叩いたわたしの右腕に目をやると、広がるじんましん。




増幅する嫌悪感。


止まらない体の震え。


こんなにはっきりアレルギー反応が出たのはいつぶりだろうか。




「騙してたの? サイテー」




わたしはリュックを背負うと早足で雨森家をあとにした。


なんだか、心にぽっかり穴が空いてしまったかのような寂しい気持ちがした。