「…千早ちゃん」
あまりにも茜ちゃんがわたしの名前を切なそうに呼ぶから。
涙が乾かないうちにわたしは振り返った。
それはまるで、スローモーションの世界みたいだった。
茜ちゃんのきれいな顔が、こっちに近づいてくる。
次の瞬間、わたしの唇に茜ちゃんの唇が静かに重なった。
「え…」
いつもみたいに、『百合じゃん!』とかそんなアホみたいなことはちっとも考えられなかった。
だってこれは、わたしのファーストキス。
それがいとも簡単に、お姫様が奪ってしまったから。
だって普通お姫様は、唇は奪われる側でしょう?
キスの余韻に浸ることなく、茜ちゃんはむくりと立ち上がって
しゃがみこむわたしを見おろした。

