気まぐれな君も好きだから

見渡す限り、大きなお屋敷が並ぶ閑静な住宅街という感じだ。

こんな場所、今までテレビでしか見たことがない。



車を走らせるうち、大きな木が立ち並ぶ並木道に出て、奥に緑が生い茂る公園が見えて来た。

遥希が言ってたお店はそのすぐそば。

知らない人には入口がわからないような、いわゆる隠れ家的なお店。

お蕎麦屋さんではあるけど、料亭みたいな佇まいだ。



噂なんて当てにならないと思ってたけど、遥希って本当にお坊ちゃんなのかな?

考えてみたら車だって小型だけど外車だし、いつも自由に乗り回してるってことは、家族所有って言っても、結局、遥希専用車なんだろう。

詳しく聞くのが、ちょっと怖くなって来る。



「うちさ、お父さんもお母さんも仕事で忙しくてあんまり家にいなかったし、兄弟は俺だけ年が離れてたから、小さい頃、いっつもお婆ちゃんと遊んでたんだよね。」

「そうなんだ。」



すごい納得。

遥希の優しい雰囲気とか、滲み出る温かさみたいなものは、お婆ちゃんから受け取ったものなんだろう。



「お蕎麦以外の一品料理とかスイーツもあるから、ここでデザート食べるのが楽しみだったの。」

「なるほど。お婆ちゃんはご健在なの?」

「ううん。俺が高校生の時、死んじゃった。」

「そう。お婆ちゃん、素敵な人だったんだろうな。」

「え?」

「遥希、見てるとそう思う。」