気まぐれな君も好きだから

退社するまでは一か月。

それまでには、やらなくちゃいけないことが沢山ある。

普段、敬遠しがちな面倒くさい作業もきちんと片付けておかないと、新しく来る古谷SVに笑われちゃうだろうし。



バックヤードで値下げしてもなかなか処分しきれない在庫の整理をしていたら、内線電話の呼び出し音が鳴った。

受話器を取ると、赤部さんの妙に弾んだ声がする。



「噂をすれば、品川店から久しぶりに電話で~す。」



一瞬、息が止まる。

古谷君と話すのは、あの日以来初めてだ。

深呼吸して恐る恐る赤くランプの光った内線電話を取ってみる。



「よぉ、元気?」

「うん、古谷君こそ。」

「異動の紙、見た?」

「うん。SV昇格おめでとう。同期で本部行く人、初めてじゃん。そういうの、何か古谷君っぽくてカッコイイね。」

「まぁな。」

「今日は何?異動の挨拶?」

「を口実に、ちょっとお前と話したかっただけ。」

「..........。」

「もちろん、友達としてだよ。」

「そ、そうだよね。あ、ねぇ、ちょっと古谷SVに話しがあるの。」

「何だよ、今からその呼び方?」

「私、会社辞めるの。」

「なんで?沢井さんと結婚すんの?」

「違う。転職。」

「マジ?」

「茶化さないで。真面目な話なんだから。」

「わかった。じゃあ、今日、会わない?」