気まぐれな君も好きだから

ちらちら古谷君の視線を感じる。

でも絶対に振り返らない。

目を合わさない。

だって無理だよ。

どうしろって言うの..........?



「要は、それが真紀ちゃんとこの事務所の子なの?」

「そう。古谷君と前の店が一緒だったんだよね。噂に寄れば、しつこくしつこく迫られてたらしいじゃん?」

「あ、いや、それはぁ.........。」

「で、負けちゃったんだ。」

「そういう訳じゃないですけど.......。」

「ふ~ん。でも良かったじゃん。」

「奈々ちゃん、何言ってんの? だから良くないっつうの。」

「はいはい。人のことより、真紀ちゃんは自分の心配しなさいって。」

「やだぁ。大きなお世話。そうだよねぇ、歩未ちゃん? あ、てか、もしかして、もう知ってた?」



へ? 嘘? ここで私に振ってくる?

無理! 無理! 無理だってば!

頑張れ、歩未!!

何とか答えなきゃ..........



「いや、全然っ、知らなかったです。びっくりしちゃいました。」

「そうなの?」

「はい。古谷君、良かったね。」



精一杯の笑顔を作って、必死に答える。

古谷君がどんな顔をしてるのかなんて見る余裕もなく、ハンカチと化粧ポーチを手にしてトイレに逃げ込む。

みんなの前で泣いちゃダメ。

痕がつきそうなくらい、唇を噛みしめる。