< 彼なりの愛情 >




その日の夜、遥希が心配して私を送りたがったけど、きちんと理由を話して断った。

予想通り、悲しそうな顔を見せるから、今の私の正直な気持ちも一緒に添えて。



もしそういう話になっても、すぐに結婚を決めるつもりはない。

遥希が思っているよりきっと、私は遥希を大切に思っているから大丈夫。

それだけ伝えたら、遥希の表情がゆっくりと明るくなった。

その顔を見ていたら、自分の気持ちも整理が出来たし、決心も着いた。



クレームのごたごたで気持ちの準備が出来ていなかったから、俊に言いたいことが上手く伝えられなかったらどうしようと思っていたけど、遥希のおかげで勇気が出た。

今はまだ将来のことまで考えられないし、仕事のことも諦めきれない。

家族に対するわだかまりだって..........



俊は店に寄ろうと思えば寄れるくらいの時間をメールしてきたけど、気持ちを切り替える時間が欲しかったから、駅で待ち合わせをした。

俊の車に乗るのは久しぶりだし、どう話を切り出されるのかと思うと、変に緊張する。

それでも笑顔を作り、助手席に乗り込むと、俊は店巡中に見つけたというお洒落なイタリアンのお店に向かって車を走らせた。