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そう、あれは1年と4ヶ月前の3月末のこと。
深夜、いつもと同じようにお店を閉めて暖簾(のれん)を下ろそうとしていたら
遠くから男と女の言い争う声が聞こえてきた。
「だから、話が違うっつってんだろ!」
「そんなことありませんよ。」
よく聞いてみれば一方的に怒鳴っているのは男だけで、女の方は冷たくあしらっているらしい。
目を凝らすといかにも水商売らしい格好をした若い女を中年のオッサンが追いかけ回している。
中年の方は大分酔っているのか呂律(ろれつ)も回ってないし、足下がふらつくのか何度もつんのめっている。
「なんでだよ、ヤらせてくれるんじゃ無かったのかよ!」
「私は一緒に寝る、としか言っていませんよ?」
「添い寝だけで十万なんて高過ぎるだろうが!」
「お陰で良い夢見れたでしょう?」
