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そういえば、家族と居て楽しかった事なんて一度も無かった。



物心付いた頃には家はもうバラバラだった。



顔を合わせれば喧嘩する両親。

離婚届なんて何枚見ただろう。

割れた食器の片付けなんて何度しただろう。


家出を繰り返す父。

ヒステリックな母。

6歳年上の兄は、何食わぬ顔でいつも本を読んでて。



家に居るのが嫌だった。


子供ながらに此処にはあたしの居場所はないとか本気で思ってた。






でも、あたしが小1の4月に弟が産まれた。



母が弟の世話に追われるようになって、

もともとあたしなんかに目もくれない人だったけど

今まで一緒にしてくれてた洗濯もあたしの分だけ取り除く様になって
今まで流れてきてた兄の残りのおかずも来なくなって

完璧に一線引かれるようになった。


理由なんか考える暇も無く、生きるために自分の事は自分でするようになった。



それよりあの二人が喧嘩どころが会話もしなくなった事が嬉しかった。


これであのどなり声も聞かなくてよくなる。

これでもう平和になる。


これで普通に暮らせる。


そう思っていたのに。