「悪い、七瀬」
いつもと変わらない、部長の
低音ボイス。
でも、弱くても、しっかりと
その声に元気のなさを感じる。
「気にしなくていいですから、
部長は、ただ、風邪を治すことだけに
集中してください。」
なだめるように、精一杯優しい声で
そう言って
私は部長をベッドに寝かせた。
…このままじゃダメだな。
寝ていればじきに良くなると思うけど
時間がかかりそう。
部長の顔は、さっきよりも確実に
赤くなっていて、
耳を澄ませば、荒くなった息遣いを
感じる。
「私、コンビニでスポーツドリンクとか買ってきますから、
大人しく寝ててくださいね」
部長の額にそっと触れて、
立ち上がろうとしたとき、私の体が
制止する。
「行くな…行かないでくれ。七瀬。
今だけでいい。そばにいてくれ」
部長の大きな手が、しっかりと、
私の手首を握っていたからだ。


