鬼部長の優しい手



「だ、だって近いから…」


堪らなくなった私は
か細い声で部長にそう訴えた。


「あ…っ、

わ、悪い!わざとじゃないんだ!ほんと、悪い…」


「い、いえ…」



部長は焦った様子で
慌てて私から離れた。







え?なにその慌てよう。
まさか、部長この近さに気づいてなかたの?



え、ほんとに?
あの距離で!?鈍感過ぎというか、なんというか…
私のさっきのドキドキを返してほしい。



「じゃ、じゃあそろそろ行くか。
この時間帯なら空いてるかもしれない」


「…はい」



部長のおすすめの店かぁ…
部長のことだから、すっごい高いとこだったり…
コース式のレストランとか…!
私、マナーとかそう言うの
できないんだけど…!
どうしよう…


そんな、くだらない心配事をしながら
前を歩く部長の後ろの歩く。

それにしても、徒歩なの?
そんなに近いとこなのかな?

ふと疑問に思っていると、
ある建物の前で部長が足を止めた。







「ついた。ここだ」



「…え」


部長が足を止めた、そこは
大きくもないが小さくもない
どこにでもあるような、お好み焼き屋だった。


お好み焼き?
部長のおすすめが、お好み焼き?

いや、変な期待をしていた私も私だけど、予想外すぎるというか、意外すぎるというか…。



っていうか、ここ…