鬼部長の優しい手



なんて、少し笑いながら
2人の会話を聞いてたとき、
山本くんはとんでもない爆弾を投下
してきた。




「あ、もし
よろしければ、



塚本部長もご一緒にいかがですか?」






突然、山本くんは黛実との会話を
中断し、一メートルほど離れた
部長のデスクに近寄ったかと思うと
周りに聞こえないよう、
小声で部長にそう、誘いの言葉をかけた。





な、なに言ってんの!?山本くん!?
なんで、よりにもよって
部長を誘うの…っ!?




私は、ありえない量の冷や汗を
流しながら
誘いを受けた部長の言葉を待つ。






「いや…っ、同僚同士の中に
一人だけ上司が入るのも悪いから…」


「そんなことないですよ、部長!




ね、七瀬ちゃん。」





山本くんは今まで以上に楽しそうに笑いながら私に同意を求めてきた。





少したれ目がちの目を細め、
茶髪をふわりとなびかせ、人懐っこく
笑う山本くんを、こんなにも腹立たしく思ったのは初めてだ。