鬼部長の優しい手




「あ、でさー
俺、今日飲みに行こうと思ってるんだけど
一人じゃ寂しいから、黛実ちゃんと
七瀬ちゃん、一緒に行かない?」



「…え…っ」



山本くんと一緒にか…
そういえば、まだ一回も行ったことなかったかも。

けっこう、仲良くしてたけど



キーボードから手を離し、
くるっと、キャスターつきのイスの向きを変え
背後にいる山本くんの方を見る。





…たしかに、帰って自炊するのも
面倒だし、



「じゃあ、一緒に行かせてもらおうかな」

「よっし!七瀬ちゃんからの
“飲みに行く許可”いただきましたーっ!」





まだ仕事中だというのに、嬉しそうに
はしゃぐ山本くん。




そんな姿を見て、思わず頬が緩む私。





「あ、黛実ちゃんも
もちろん行くよね?

七瀬ちゃんも来るらしいし。」

「…涼穂を使うなんて、本当
卑怯なやつ!」






鬼のような形相をしながら、
悔しそうに山本くんを見る黛実。





そんなに、嫌なの…
黛実だってお酒好きなはずなのに




いや、山本くんが嫌なのか…。