鬼部長の優しい手





「なーなっせちゃん。」

「え…っ?」



再びパソコンの前に座り直したとき
背後から、やけに明るい声が聞こえてきた。




この声は、山本くん?



「随分とさぁー、
部長と仲良さげだね?」


「え、いや…そんなこと
ないけど…」



山本くん、なんでこんなに
にやにや笑ってんの!?




背後からきた山本くんは
驚くほど終始にやけた顔つきだった。



「そんなあからさまに否定すると、
余計に怪しさが増すよ?」



「…っ」






なんか、腹立つ…

山本くん、すっごい楽しそう…
なにが面白くてそんなに笑ってんの!?





未だ笑顔の山本くんに、徐々に
怒りが浮かんでくる。
そんなとき、山本くんは突拍子もない
ことを言ってきた。




「あ、そうだ。今日さー
俺、黛実ちゃんと飲みにいくんだけどー」


「そんな約束した覚えは、ないわ」




心底、楽しそうな山本くんの声に
心底、嫌そうな顔をする黛実。





ほんと、この2人は噛み合わないなぁ…
山本くんの気持ちに気づいてあげて!





…なんて、能天気なこと思ってる私がバカだった…


先のことを予想しとけばよかった。