「終わったー!」
「そこ、うるさいぞ。」
大きくため息をつくと
塚本部長の低い声が、私と部長
二人きりしかいない社内によく響く。
「あ、すみません」
他の社員がみんな、仕事を終えて
帰宅した頃、私はやっとの思いで
書類整理を終えた。
辺りは真っ暗、黛実もついさっき
仕事を終えて帰宅していった。
私の倍の量、仕事してるはずなのに
なんで、私より早く終わってるの!?
黛実の裏切り者!
「……七瀬」
「あ、はい、なんですか?」
少し、イライラとしていた私の
耳いっぱいに広がる塚本部長の低音ボイス。
「あ……、その……さ」
「は、はい」
部長があまりにも真剣な表情で
気まずそうな声色で、話すものだから
私も思わずかしこまり、座っているイスの向きをくるっと変えて部長と向き合う。
どうしたんだろう?
部長、そんなに改まって。
また、怒られるのかな。
今度はなに、やらかしたの私!
また、塚本部長に怒られると思った私は少しヒヤヒヤしながら、黙りこんでしまった部長の次の言葉を待っていた。
「この後、時間あるか?」
え?


