鬼部長の優しい手




…なんだ、これ。
体中の熱が全部、顔に集まったみたいだ…



「…部長…?
どうかしましたか?
や、やっぱり怒りました…よね?
あんな、失礼なこと言って…っ」


「ああ…っ、いや
怒ってないから…!大丈夫だから…っ」



慌ててそう言うも、七瀬は相変わらず
しょんぼりとした顔をしたままだ。





…普段の俺なら、女のそんな顔を見ると
どうしたらいいのかわからなくたって、
情けなくあたふたするだけ。

だけど、


「七瀬、大丈夫だから。
そんな顔するな」


俺は、できるだけ優しい声色で
そう言って、七瀬の頭に手を置いた。

前に、同僚が見せてくれた雑誌。
女がされて嬉しい仕草ベスト3という
記事に“頭を優しくなでられる”
そんな事が書いてあったがあった気がする…


32になって、未だに結婚していない
俺を心配して同僚が見せてくれた…
というか、見せられた。


優しく…できているかわからないが、
できるだけ力加減を気にして七瀬の
頭をなでてやる。
“大丈夫、気にしなくていいから”
そんな気持ちを込めて。




「あ、ありがとうございます…」

「ああ、いや…いいんだ」





気恥ずかしそうにする七瀬に
つられて、俺も顔も少し赤くなる。


耐えきれなくなった俺は、七瀬の顔から
視線を外した。