「なにかって、何を?」
俺の質問に小首を傾げる七瀬。
「あ、いや……その」
「……あっ、
もしかして、部長
自分が酔うと甘え上戸になるって知ってました?」
「……っ!」
嘘だろ。
本当にか?
本当に、七瀬の前で
そんな情けないとこを見せたのか。
「わ、悪い!」
俺はバッと勢いよく七瀬に頭を下げた。
突然の俺の行動に、七瀬は黒目がちの目を見開いて、驚いた表情で俺を見た。
うわ、急に顔に熱が集中してきた
七瀬は軽蔑したんじゃないか。
どんな風になったかまでは覚えていないが
後輩に甘える上司なんて、
聞いたことないぞ。
七瀬が、どこか元気がない様子だったから少しでも気分転換になればいいと
誘ったのに、
なにをやってるんだ、俺は。
「ど、どうして謝るんですか!?
あ、頭を上げてください、部長」
「……家まで運んでもらった挙げ句、
情けないところを見せて…
……お前が軽蔑したんじゃないか、と思って。
本当に悪かった」
こんな、バカな上司をこいつはどう思うだろう?
後輩に、しかも女に
俺みたいな男が運んでもらうなんて。
自己嫌悪に陥った俺の様子を見た七瀬は、慌てて首を左右にふり、微笑んだ。
「軽蔑なんて、そんなことしませんよ。
部長が、ご飯に誘ってくれただけで
もう、嬉しかったですから。」
「ほ、本当か?」
「はい!
それに、普段見れない甘えん坊な部長
すっごく、可愛かったですよ?」