沙耶香さんのお母さんが…
ああ、ダメだよ。そんなこと言われたら…
また涙が出てくる。
私は慌てて頬を拭い黛実の方を向いた。
「…さっきしたサムシングフォーの話、
覚えてる?」
「…あ、うん…っ」
今にも泣き出しそうな私は、
もう返事をするだけで精一杯。
そんな私を見て、黛実は微笑んで、
今度は優しく頭を撫でて、イスに座る
私に目線を合わせるようにかがんだ。
「…これ五年前のものらしいから、
サムシングオールド、なにか古いものに
当てはまるし、
サムシングブロー、なにか借りたものに
当てはまるから、これつけて結婚式
出てほしいの。」
「だから、サムシングフォーの話
したんだね。」
微笑んで言う黛実につられ、私も笑う。
さっきまで緊張と不安でいっぱいで、
涙が止まらなかったから、今日こんな風に笑うのは初めてだ。
…どうしてだろう。ただのグロスなのに、これに沙耶香さんの想いが、
沙耶香さんのお母さんの想いがつまってると思うと、すごく幸せだって感じる。
「…これだけじゃないの!」
「え?」
しみじみと幸せにひたっていると、
黛実が満面の笑みでそう言った。
「これだけじゃないって…」
「サムシング“フォー”よ?
あと2つ残ってるじゃない。
サムシングブルーと、
サムシングニュー!」
あ、そっか。サムシングフォーは4つなんだからあと2つ、ブローとニューが
残ってる。
サムシングブルーは確か本来、
青いガーターリボンをつけるんだったっけ…
「サムシングニューは、今着てるドレスでもうオッケーでしょ?
最後はサムシングブルー、
じゃーん!」


