鬼部長の優しい手




「…なにも、そんなに落ち込まなくてもいいだろ。」


あからさまに気を落とした私に、部長はそう言って、困ったように微笑んだ。


「…べつに落ち込んでなんかいません。」

「…拗ねるなよ。」

不満そうに呟いた私に部長はまた
そう言って、笑う。


…だって本当に全然言ってくれないんだもん。
こういう機会にいっぱい聞いとかなきゃ
なんか損な気がする。
…その考え方もどうかと思うけど。


まだ、拗ねた様子を見せる私に、
部長は終始笑って運転をする。


…そんなに笑わなくってもいいのに。
あ、そういえば、結局どこに向かってるんだろ?
なんにも教えてくれなかったからなー
部長。


「あの、結局どこに行くんですか?」

「…もうすぐ着く。」



部長がそう呟いた数分後、
車は小さなお寺の前に停車した。

お寺?お寺になんの用が…



「着いたぞ。足下気を付けろ。」

「は、はい。」


先に降りた部長に手を引かれ、
私もおずおずと車から降りた。



お線香の香り、踏み入れるとその香りが
より一層強くなった。



大きなものや、小さなもの、
少し変わった形の墓石。
色んなお墓がいくつも並んでいた。




…そういうことか。と、
私は妙に納得した。