鬼部長の優しい手





「…そんなに、嫌?」


「嫌って言うか…」



いつまでたっても名前を呼ばない私に
しびれを切らした山本はそう言ってきた。



嫌じゃない、嫌なわけじゃなくて、


…今までずっと、山本って呼んできて、
今更名前を呼ぶのは結構恥ずかしいし、
抵抗がある。


「…嫌なら仕方ないけどさ、
黛実ちゃんだって近いうちに“山本”になるんだよ?

今のうちに慣れとかないと。」





抱き締められたままなにも言わない私に
山本は少し声のトーンをさっきよりも
下げて、そう言ってきた。




ちょっと、待って。
なんか今すごい発言を聞いた気がするんだけど。



「近いうちに“山本”になる…って、
え?」


「あ…っ、待って!今のなし!
忘れて!」



私の言葉に、山本はバッと私を離し、
慌てて両手で顔を隠した。






…うそ、ねぇ、それって…



「…プロポーズ?」