鬼部長の優しい手




「部長…」


部長、一人でずっと、そんなこと
考えてたんだ…


一人で抱え込まないでって言ったのに、
部下の忠告を全然聞いてくれないんだから、もう。



…クールで冷徹で、しっかりしてそうに
見えて、誰よりも寂しがりやで、
情けなくて、



本当、めんどくさい上司。

そんなめんどくさい部長をこんなに
愛しく感じる私も、相当変わってる?



「…忘れなくていいと思いますよ。」


「え…」



聞こえるか聞こえないかくらいの
小さな声で呟いた私に、
部長は目を丸くして、驚いた声を出した。



「むしろ、忘れちゃダメですよ。


…部長が紗耶香さんを忘れちゃったら、
紗耶香さんを想う人が、
もう誰もいなくなっちゃう。

そんなの、酷すぎます」



涙を堪えながら言った、その言葉は
たぶん震えてた。


震えた言葉に、いくつもの想いを
込めた。


“一人で抱え込まないで”

“私にもそばで支えさせて”

“紗耶香さんのことを決して忘れずに、
もう少し周りに目を向けて、


願わくは、私をみて”