鬼部長の優しい手




「あ、あの…部長?」


「…昨日からずっと考えてた」

「…え?」


部長は私の顔を両手で包みながら、
ぽつりぽつりと話はじめた。



「…紗耶香と七瀬のこと」


「私と、紗耶香さんのこと?」


「ああ。


…本当は、もう、
昨日七瀬に言われる前から、
とっくに吹っ切れてた」



吹っ切れてた…って、
紗耶香さんから立ち直れてたってこと?


でも…だったら、
部長はどうして昨日、あんなに
悲しそうな顔してたの?



私はそんな疑問を浮かべながら、
部長の次の言葉を待った。




「七瀬のおかげで、
紗耶香のことを忘れかけてる自分がいた。



…だからこそ、怖かったんだ。」



「…え?」




怖かったって…
前向きになるのは、
いいことだと思うんだけど…



私はそんなことを思いながら、
悲しそうに笑いながら話す部長を
見つめる。





「…紗耶香は俺が殺したも同然だ。

なのに、その俺が紗耶香を忘れるなんて
最低だろ?


…それに、紗耶香は俺が初めて愛した
人だった。

だから、忘れたくなかったんだ。」