鬼部長の優しい手




「…予想通りの顔だな。
いい反応だ。」



部長は、ふっと笑ってそう言うと
靴をぬいで、なんの躊躇もなく
部屋のなかに入ってきた。



な、なんで、入ってくんの!?



「部長…なんで…」


「どうしてここに居るかって?」


部長は、そう言って
ゆっくりとした動作で私の正面に座った。



「…今日、何度もお前に声を
かけようとしたんだが、
そのたびにお前が逃げるから

笠野と山本に、
お前と二人になれるように、計画してもらった。」


「黛実と、山本くんに…?」




じゃあ、あの電話は全部嘘!?
だから黛実、注文もしないで、
出ていったんだ…






…気まずい。
せっかく二人がこんな場を作ってくれたけど、無理だよ。

あんな失礼な事言っちゃったし。




…ああ、もう、
この沈黙が辛い。
自分から離れていったくせに



…あ、ダメだ…また、




私は部長の顔が見れずに、
うつむく。


その瞬間、じわりと視界が滲み、
鼻の奥につんっとする感覚





なにやってんの
泣いてる場合じゃないでしょ


そうわかっていても、
滲んだ視界は、なかなか元には
戻ってくれない。