鬼部長の優しい手




「う…そ…」



行っちゃった…


あんな慌てるなんて
本当なにがあったんだろ…

聞く暇もなく出てっちゃった





私は唖然と、
黛実が出ていった方を見つめる。





まあ、いいや、
こうなったらとことん飲んでやる!

個室だし、
周りを気にしないで、飲んでやる!




私はそう意気込んで、
メニュー表を開いた
そのとき、







「じゃあ俺行きますね。」



「ああ、悪いな」






…階段から聞こえてきた、その二つの声は、

聞きなれた、山本くんの声と、





大好きな、部長の低音ボイス





「うそ…!

なんで部長がここに!?」




個室で、扉を閉めてあるから、
部長には見つからないと思うけど…





私は反射的に、
持っていたメニューで咄嗟に顔を
隠した。




コツコツッ…



廊下を歩く足音が聞こえる。



足音は、ひとつだけしか聞こえない…
山本くんはいないの?



話す声も聞こえなくなったし…





そんなことを考えていると
私がいる個室の前で、ふと、
足音が止まった。






うそ…
部屋の前で止まった…!?




私はメニュー表を強く握り、
息をのんだ。






その瞬間、
ガラッという音と共に、
扉が開き、見慣れた姿が目に入る。







「…七瀬」



耳いっぱいに広がる
大好きな声。




「なんで…部長…」




なんで、私がここにいるって
わかったの!?



扉だって、閉めてたのに…!