鬼部長の優しい手




いやいやいや、
それはさすがに…。


もっと、触れてって…なんで…




「七瀬?どうした、座らないのか?」

「あ、はい
すみません…」




さ、さっき考えたことは
忘れよう!
純粋に部長との食事を楽しもう、うん。
せっかく部長が誘ってくれたんだし。


私はそう思い、席に座った。




ほんとに久しぶり。
なに食べよう


「やっぱり、豚玉かな…
あ、でも餅チーズも美味しそう!」


「…楽しそうだな。七瀬のそんな顔
初めて見た」


「えっ…」




これにしようか、あれにしようか、

部長は、あれこれ悩んでいる私を見て
フッと口元を緩ませた。








部長が、

“鬼の塚本”が…












「笑った…!?」

ガタンッ

あまりの衝撃に私は勢いよく立ち上がり、
呆然と立ち尽くした。


「…失礼なヤツだな。
俺が笑っちゃおかしいか?」


「いや、別に
おかしいということは…、ないんですけど
珍しいというか、
初めて見たといか…その…」



私は座りなおし、下を向いたまま
言葉を濁す。


部長、絶対怒ってる…よね?




塚本部長の様子が気になり、
恐る恐るチラッと部長の顔を見た。





「俺も、七瀬の笑った顔
初めて見た。」



「え…っ」




部長は、やけに真剣な顔つきで
それでいてどこか申し訳なさそうに
そう言った。