ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】

「その時は、先生の指示で昇圧剤の投与が開始されて、一命は取り留めました」

「昇圧剤の薬品名は?」

おいおい、そんなこと聞いてどうするよ? と。横で聞いていて内心思うも、那智はすこぶる真剣だ。


「プレドパです」

「プレドパ……」

那智はどこか納得したように、向山師長が口にした薬品名を繰り返した。


「それで?」

そうしてまた、先を促す。向山師長は渋々といった感じで言葉を続けた。

「その三日後でした。患者のレベルが急に低下したんです」

「意識不明の重体に?」

確認するように訊き返し、那智はちらと一瞬だけ俺に視線を送る。どうやら、『レベル低下って何?』という俺の心の中の問いを察したっぽい。

ありがたいけど面白くない。


「ええ、その数時間後、心停止して患者は亡くなりました。終末期の患者でしたし、ご家族も延命措置は拒否されていましたし。本当にあっという間の出来事でした」

「それが辻岡の仕業だと疑いがかかったんですね?」

「はい」

苦しげに表情を歪めて彼女は頷いた。