ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】

この病棟の患者を死なせたってのは、どうやら単なる噂じゃないようだ。那智も同じことを思ったらしく、

「俺たちが追ってるのは、飽くまで悦子さん殺害の真犯人です。それ以外の事件については検挙したりするつもりはないです。自分の仕事だけで手一杯なんで」

そう言って、照れ臭そうに笑って見せた。


こいつ策士だな、と改めて思う。その患者の死が、今回の悦子殺害に関係してる可能性が無いとは言い切れない。

だが那智と初対面の彼女は、その無邪気で可憐な笑顔に惑わされ、まんまと那智の術中に嵌る。


「辻岡先生が当直だった夜間帯に、肝臓癌の終末期の患者が急変したんです。急激に血圧が低下してとても危険な状態でした」

そこまで話すと向山師長は、また深く息を吐き出した。それと同時に彼女の肩が上下する。よほど言い辛いことらしい。


「それで、当直医の辻岡が呼ばれたが、患者は助からなかった?」

那智が痺れを切らしたように先を促す。

「いいえ、」

そう答え、向山師長は意を決したように顔を上げて俺たちを見た。