が、すぐに何かを思いついたように顔を上げ、
「先生が何か? ひょっとして……あの事件に関係があるんですか?」
俺たちの顔を交互に見やりながら尋ねた。
『あの事件』とは、東郷悦子殺害事件のことだ。この病院の職員なら、ほとんどが知っていて当然。ましてや師長クラスともなれば尚更だ。
「いえ。これも捜査の一環なんです。些細な疑問点でも一つ一つクリアにしていく必要があります。彼の退職について詳細が不明なので、何か思い当たることがあれば話して頂けませんか?」
俺の白々しい訊ね方に、向山師長は困ったような苦笑をフッと漏らした。
「刑事さんがここにみえたってことは、大体のことはご存知なんでしょ?」
彼女は真っ直ぐに俺を見詰めて言った。
落ち着いた口調ではあったけどそれは、外科医についての聞き取りなのに、俺たちが外科病棟ではなく消化器内科病棟へ来たことについての嫌味を含んでいる気がした。
「ええ、まぁ……」
曖昧に答えると、彼女は深々と息を吐き出した。そうしてこちらの様子を窺うようにして弱々しく尋ねた。
「私が知っていることをお話ししたとして、それで辻岡先生が罪に問われることは?」
「先生が何か? ひょっとして……あの事件に関係があるんですか?」
俺たちの顔を交互に見やりながら尋ねた。
『あの事件』とは、東郷悦子殺害事件のことだ。この病院の職員なら、ほとんどが知っていて当然。ましてや師長クラスともなれば尚更だ。
「いえ。これも捜査の一環なんです。些細な疑問点でも一つ一つクリアにしていく必要があります。彼の退職について詳細が不明なので、何か思い当たることがあれば話して頂けませんか?」
俺の白々しい訊ね方に、向山師長は困ったような苦笑をフッと漏らした。
「刑事さんがここにみえたってことは、大体のことはご存知なんでしょ?」
彼女は真っ直ぐに俺を見詰めて言った。
落ち着いた口調ではあったけどそれは、外科医についての聞き取りなのに、俺たちが外科病棟ではなく消化器内科病棟へ来たことについての嫌味を含んでいる気がした。
「ええ、まぁ……」
曖昧に答えると、彼女は深々と息を吐き出した。そうしてこちらの様子を窺うようにして弱々しく尋ねた。
「私が知っていることをお話ししたとして、それで辻岡先生が罪に問われることは?」



