消化器内科の病棟師長はふくよかな年配女性で、物腰の柔らかい穏やかな人だった。
時刻は午前10時過ぎ。誰も使用していない休憩室に案内された。
奥の壁際には荷物程度が入る大きさの職員用ロッカー、真ん中には横長のテーブル、電子レンジや流し台もある。
師長の向山さんは、部屋に数脚あった椅子を俺たちに勧め、自分もそのうちの一つにテーブルを挟んで向かい合うように腰掛けた。
半年前に辞めた辻岡昴医師について尋ねると、彼女は視線を机の上に落とした。たちまち曇った表情は、嫌悪感からというより、どこか切なげに映る。
「患者思いのとてもいい先生でした。患者だけでなく、私たち看護師に対しても誠実で優しくて、当直が辻岡先生の日に夜勤入りする看護師たちは、『今日は当たりだね』って喜んでたものです」
そう言って、向山師長はまるで懐かしむように、彼が現在ここに居ないことを嘆くように、寂しげに微笑んだ。



