「おい、那智! おいって!」
呼び止めようと声を張り上げたけど、その背中は遠ざかる一方だった。俺も立ち上がって後を追う。けど、ふと思い出して足を止め、初音を振り返った。
初音も既に立ち上がっており、那智の切り替えの早さに呆気にとられているらしく、その口を微かに開いてポカンとしていた。
「『ふじがさき』って、どう書くんでしたっけ?」
「普通に『藤ヶ崎』ですけど」
不思議そうに小首を傾げる初音に、ジャケットの胸ポケットを探り、そこから取り出したボールペンと、手帳は片手で開いて彼女に差し出した。
素直に受け取った初音は、再び床に正座し、ローテーブルの上で文字を書く。丁寧に綴られた『藤ヶ崎』を見ながら、
「ああ、ほんと。普通に『ふじがさき』だ」
感想っぽいことを適当に言って、手帳とボールペンを元あった場所に戻した。
初音がペンを握った手は、左手だった。
呼び止めようと声を張り上げたけど、その背中は遠ざかる一方だった。俺も立ち上がって後を追う。けど、ふと思い出して足を止め、初音を振り返った。
初音も既に立ち上がっており、那智の切り替えの早さに呆気にとられているらしく、その口を微かに開いてポカンとしていた。
「『ふじがさき』って、どう書くんでしたっけ?」
「普通に『藤ヶ崎』ですけど」
不思議そうに小首を傾げる初音に、ジャケットの胸ポケットを探り、そこから取り出したボールペンと、手帳は片手で開いて彼女に差し出した。
素直に受け取った初音は、再び床に正座し、ローテーブルの上で文字を書く。丁寧に綴られた『藤ヶ崎』を見ながら、
「ああ、ほんと。普通に『ふじがさき』だ」
感想っぽいことを適当に言って、手帳とボールペンを元あった場所に戻した。
初音がペンを握った手は、左手だった。



