ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】

「5階だぞ? なんで階段?」

慌てて引き留めようとすれば、

「エレベーターの位置は把握した。それで充分だろ?」

と、こちらを振り返ることもせず素っ気なく返された。意味がわからん。


呼吸苦と闘いながら、那智より数分遅れで5階へ到着。那智は、初音の部屋の前にいるようだけど、ドアとは反対側、コンクリートの手摺に掴まって、半身を乗り出し上方を仰ぎ見ていた。

何やってんだ、こいつ……。


俺に気付くと那智は、

「遅ぇな」

呆れたように言って、ふっと失笑を漏らした。



インターホンを鳴らせば、待ち構えていたように扉が開く。もちろん、しっかりチェーンロックはされていた。


隙間から覗いた顔は、俺が今朝会った妄想女と、作りは一緒のような気がする。けど雰囲気がまるで違った。

化粧をしてないからかも知れない。


付け睫毛なんかしなくても、パッチリとした円らな瞳。どぎつい色のリップグロスなんか塗ってなくても、ほんのり桜色のぷるんとした唇。綺麗に象られた眉。色白の肌。

フツーに可愛い。