ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】

「そういや、彼女元気? 菊島さんだっけ?」

白々しく尋ねて、那智の横顔を窺い見る。


「とっくの昔に別れた」

那智は表情を微塵も変えずに答えた。

「なんで?」

更に掘り下げて訊く。別れたってことは薄々察していたさ。俺は別れに至ったその経緯が知りたい。


「フラれたんだよ」

平淡な口調だったが、那智の表情が心なしか変わったように見えた。ちょっとムッとした?


「だから、なんでフラれたんだよ?」

「なんで嬉しそうなんだよ?」

「いや、俺は別に……」

俺の心中は見透かされていた。さすがは潜入捜査官。そして、あの窪田が見込んだ男、芹沢那智。


那智は俺の方に一瞬だけ迷惑そうな視線を寄越すと、すぐに前方へ向き直り、そうして渋々といった感じで口を開いた。

「『もっと会いたい』と言われ、『無理』と答えた。それで終わり」


別れた理由は、案外在り来たりなものだった。

フラれたとか言いつつも、結局のところ、那智より彼女の気持ちの方が重かったって話じゃね? ちっとも面白くない。