ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】

「整理する」

那智が突然に口を開く。けどそれは、俺に言ってる感じではなくて、独り言みたいだった。

視線はフロントガラスの向こうに釘付け。俺の方なんか、その存在すら忘れているかのように見向きもしない。


「ガイシャは東郷悦子、29歳。藤ヶ崎病院の薬剤師。メイクや髪型が派手で、よく薬局長に注意されていたが、仕事振りは真面目。わからないことを訊けば、親切丁寧に教えてくれると、他の職員――特に看護師からの評判は良い。

ガイシャの双子の妹、東郷初音、同じく29歳。修光池(しゅうこうち)自動車学校の受付。地味な女で印象が薄く、通っている生徒に訊いても『誰だっけ?』な感じ。だがこちらも仕事振りは真面目。意欲的とは言い難いが、淡々と卒なくこなしていた」

「ふーん、二人とも、誰かから恨みを買うような人物じゃなかった、か」

「関係者の証言を聞いた限りではな。だけど自分のダークな部分をさらけ出してる人間なんて、そうそういねぇだろ」

そう言ったきり那智は黙り込んだ。その横顔は、どうにも腑に落ちない何かに思考を巡らせている、そんな風に映った。