ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】

「この人たち刑事ですよ」

すかさず倉橋が言う。「なんだと?」と岩淵。さっきよりもう少し驚いた様子。

子分たちが俺と那智の身体をまさぐり出した。もう全てを諦め、されるがままだ。すぐに警察手帳が子分たちの手に渡った。

「ありました。組織犯罪対策課、有坂……かいと?」

「みなとです」

つい自己紹介しちゃったし。

「こっちは捜査一課、芹沢那智」

「こいつらが有坂と芹沢か?」

岩淵が言う。俺たちの名前を知っているようだ。

「有坂と言っても、この人は弟の方です」

倉橋が淡々と訂正する。なにその『じゃない方』みたいな言い方。気分悪いんですけど。

「まさか殺したりしねぇよな? 俺たち警官だし」

望み薄々だけど一応尋ねてみた。もちろん岩淵は鼻で笑う。

「こっちには警察のお偉いさんがついてんだよ。警官だろうが関係ねぇ。商売の邪魔するヤツは消すしかないだろ。綺麗さっぱりと、な?」

「お前のボスは、このこと知ってんのか? 知らねぇだろ? あの人がこんな醜悪な商売許すわけねぇもんな」

那智が挑発的に言う。そして更に続けた。

「ヤクを藤ヶ崎病院使って街にばらまいたのも、お前の独断だろ?」

「だったらどうだってんだ? お前らはここで死ぬんだ、バレることはねぇよ。永遠にな」

岩淵は「始末しろ」と吐き捨て俺たちに背を向ける。「はっ」と揃って返事をする子分たち。

「岩淵さん」

引き留めたのは倉橋だ。不機嫌顔で振り返った岩淵に、

「それ、僕にやらせてもらえません? この二人に訊きたいことあるんで。訊くこと訊いたら、そこの冷凍庫入れときまーす」

と明るい調子で恐ろしいことを言う。サイコパス野郎め。倉橋が指した先には、でっかいスチール扉があった。間もなく俺たち、冷凍保存されちゃうのか。

岩淵は考えることなく「好きにしろ」と言って部屋を後にした。

その場に突っ立ったままの子分たちに、

「席外してもらえます?」

と倉橋は貼りつけたような笑顔で言う。不愉快極まりないあの男が、

「聞かれちゃまずい話でもあんのかよ?」

訝し気に問う。こいつは倉橋のことを信用していないようだ。

「聞かれちゃまずいと言うよりは、必要な情報を引き出すには、あなたたちが障害になるというか……邪魔?」

「なんだと、てめぇ。だいたいよぉ、冷凍なんてしちめんどくせぇことせずに、これでやっちまえばバン、バンで片付くじゃねぇか」

男は手にしていた銃で、那智、俺と順番に撃つ真似をしながら言う。うっとうしい。

「血が飛び散るでしょ。掃除が面倒ですよ」

「下のもんにやらせりゃいいだろ」

「やりたい人いますか? 掃除」

倉橋が子分たちを見回す。もじもじするだけで誰も名乗りを上げないの確認すると、

「いないみたいですよ」

と言って満面の笑みを見せた。

「矢神さん、ここはこいつに任せましょうよ。仕事が減ったと思えばいいじゃないですか」

子分たちの一人が、半ば強引に不愉快な男――矢神を連れて部屋の出口に向かった。矢神は倉橋の方をもの言いたげな顔で振り返りながらも、子分たちに強制連行されていった。