ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】

俺は那智の左脇を抱えている方のヤツの首を、背後から右腕で締め上げ那智から引き剥がした。右側のヤツは自分でなんとかしろってことで。

だがしかし、背は俺の方が高いものの、なかなかの屈強な男で、首に巻き付けた俺の腕を掴んでお辞儀するように前屈され、俺の身体が宙を舞う。その直後、床にしたたかに背中を打ちつけた。

すぐに転がって立ち上がろうとするも、延髄に蹴りを食らいうつ伏せに倒れた。抵抗する間もなく後頭部の髪を鷲掴みされ、頭を持ち上げられる。激痛に逆らえずされるがままの俺。床に額を数回打ちつけられて、意識が飛びそうになった。

男は俺の背中に馬乗りになり、ベルトみたいなものを首に巻き付けてきた。今度は俺が首を締めあげられる。視界の先にバタフライナイフが落ちていたので、全力で手を伸ばした。

さすが俺。すぐに手が届き、その柄を逆手に掴んだ。そして、背後の男の届くところに、思いっきりぶっ刺してやった。低い悲鳴が響き渡り、俺はようやく解放され、すぐさま振り返りながら立ち上がった。

ナイフは男の太ももに深く刺さっていた。下腿動脈を避ける余裕なんかなかったけど、出血の量が大したことないから、多分ずれているだろう。運のいいヤツめ。

既に悶絶状態だが、念のためその側頭部に強烈な蹴りを入れておく。おやすみなさい。

敵がまだまだたくさん残っていてうんざりする。敵を選ぶ余裕なんかないはずだけど、弱そうなヤツに自然と身体が向かうから不思議だ。

しかし、チャキッという金属音が、喧噪の中でもやけにはっきり聞こえ、たちまち場は静まり返る。

「はい、お疲れさん」

声の主は不愉快極まりないあの男だ。銃口をこちらに向けて構え、相変わらずの不愉快なにやけ顔。

なんだよ、銃持ってんなら最初に出せよ。無駄に体力消耗しちゃったじゃねぇか。

俺も那智もそろそろと両手を上げた。

連れて来られたのは食材保管庫らしい部屋。棚がいくつも立ち並び、食材が綺麗に陳列されている。料理はちゃんとまともなものを出しているらしい。まあでも、舌の肥えた大物相手だから当然といえば当然か。

お約束のように俺と那智の手足を縛り、椅子に拘束したら、不愉快な男とその仲間たちはそれ以上何もしてこない。どうやら誰かを待っているようだ。

俺の腹時計で10分後、出入り口のドアが開き岩淵が入って来た。そしてもう一人、岩淵の後について入ってきたのは――――

――――倉橋拓斗だ。

くっそ、やっぱりあいつ怪しいと思ったんだよ。元公安なんて胡散臭いことこの上ないだろ。気付けよ谷口さん。

終わりだ、身バレする。

岩淵は那智を見て少し驚いた表情を見せた。

「お前、こないだの……どこぞの若いもんじゃねぇか」

「その節はどうも」

那智はへへっと笑う。無理だって。あちら側に倉橋が居るから、それで乗り切るのは無理だって。