ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】

もちろん、ここで行われているいかがわしいことを突き止め、阻止するのが目的だ。そして、『あさみななこ』のような幼い被害者が他にも居るなら、保護しなきゃならない。

すぐに、いかにもな部屋にたどり着いた。まるでホラーゲームに出てくるような頑丈な鉄扉だ。あれは確か、廃墟となった精神科病棟が舞台だったか。

中から出られないように、かんぬき錠がかけられている。錆びていて動かしにくくはあったが簡単に解錠できた。

できるだけ音を鳴らさないようにゆっくり扉を開けたが、ぎいと嫌な音が小さく響いた。

俺と那智は部屋に足を踏み入れて唖然とした。そこはコンクリートの壁に囲まれた、何もないだだっ広い部屋で、奥に鉄の格子扉で仕切られた、まるで留置場のようなスペースがあった。

その中に、十人ほどの少女が身を寄せ合って震えていた。一番年長と思われる子でも、義務教育を修了していない年齢であるのは明らかだ。若いを通り越して幼い。

「よくこんな酷いことができるな」

俺が言うと、

「売るやつもクソだが、買うやつはもっとクソだな」

那智が低く呟く。そして、

「全員ぶっ殺してやる」

と続けた。

「那智くん、それ比喩だよね?」

「比喩だといいね」

軽い口調で言ってふっと笑う那智。だがその両眼は笑ってはいなかった。怒りに満ちていた。

「今出してやるからな、もう大丈夫だ」

那智は少女たちに優しく語りかけながら、格子扉に取り付けられた南京錠に針金のような物を差し込んで解錠しようとした。

「お前ら、何者だ? どっから入った?」

背後から声をかけられ振り返れば、部屋の出入り口からぞろぞろとチンピラたちが入ってくる。

やばっ。出口塞がれて逃げ場がない。

「妹を助けるために、裏口から入った」

那智はまた平然とハッタリをかます。

「そいつぁおかしいな。こいつらみんな身寄りがないやつばっかのはずだけどなぁ。まあ兄貴がいようがいまいが、関係ねぇ。こっちは大枚はたいてこいつら買ってんだよ。そうやすやすと渡してたまるか」  

この中では一番上の立場らしい男が薄ら笑いを浮かべて言う。顔もいけ好かないが、高級そうなスーツを台無しにする趣味の悪い柄シャツも、先の尖った革靴も、何もかも全てが不愉快なヤツだった。

「こんな幼い子どもたちを働かせるのは違法だろ。解放してやれよ。本来居るべき場所へ返してやるべきだろ」

「そいつらの居るべき場所はここなんだよ」

「ここな訳ねーだろ!」

珍しく那智が声を荒げた。

「だったらどうするよ?」

「通報する。お前らの悪事を全部警察に話すぞ。いいのか?」

那智は一般市民の設定でいくつもりらしい。承知した。

「通報したところでもみ消されるだけだ。警察のやつらも上客なんだよ。まあ、通報なんかできねぇけどな」

不愉快な男は不愉快な笑みを浮かべ不愉快な声で続けた。

「お前ら、ここを生きて出られるとでも思ってんのか?」