ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】

一本道を那智と二人仲良く並んで足早に進んだ。兄貴とゴージャスレディが双子ジャイアンに止められている隙に、双子ジャイアンの背後をシレっと通り過ぎようとした。がしかし、もちろん双子ジャイアンの片方に「おい、待て」と肩を掴んで引き留められた。

「お前ら予約は?」

「予約いるの? たいして混んでるようにみえないけど?」

自由の身の那智がすっとぼけて言う。俺は肩を掴まれていて、下手なこと言ったら腕をへし折られそうだから黙っていた。

「悪いな、うちは一見さんはお断りなんだよ。とっとと帰れ」

「そこをなんとか。外観もイケてるし、きっと料理も最高なんだろ? こう見えて、俺たち金ならたっぷり持ってんだぜ」

那智は顔の前で両手をすり合わせながら愛想笑いを浮かべて言った。なーにが『だぜ』だよ。

「お前ら、ここがどこだかわかってねえようだな」

「どこなの?」

「説明する必要はねぇ。俺が優しいうちに帰った方が身のためだぞ」

「帰らないとどうなんの? まさか、暴力なんか振るわないよね?」

「そのまさかだよ。まずこっちの大人しい方から……」

俺の腕がきりきりと締め上げられる。痛い、やめて。

「あっ、あのお兄さんたち店に入っちゃうよ、いいの?」

那智が言うので見れば、兄貴とゴージャスレディが半ば強引に店内へ押し入り、双子ジャイアンの片割れが兄貴たちと並んで歩きながら必死に説得を試みているところだった。どうやらあのゴージャスレディは、力ずくで追い払うわけにはいかないような立場の女性らしい。そしてそれに付け込み、躊躇なく兄貴を売る那智。

「あ、俺たちは帰るから、どうぞ、お仲間に加勢してあげて」

言って那智は俺の腕に自分の腕をからめて、ジャイアンに背を向け引き返す。兄貴たちの強行突破に焦ったジャイアンは、那智のかましたはったりをいともたやすく信じ、兄貴たちの後を追った。

その瞬間、那智は踵を返す。「皆人くん、走れ」と小声で言って駆け出した。俺も那智の後を追って全力で走った。どうでもいいけど、俺と那智じゃコンパスの長さが全然違うはずなのに、追いつくどころか、むしろ引き離されるのは何故なんだ。

息を切らせながら店の周囲をぐるりと回って裏口へたどり着いた。表の華々しい外観とは一変して殺風景だった。薄汚れたコンクリートの打ちっ放しで、まるで廃墟ビルだ。

そのど真ん中に頑丈そうな赤茶色の鉄扉が一枚、外からぺたりと貼りつけたように存在していた。扉の両脇にはデカいポリ容器がいくつも並べられていた。生ごみが捨てられているんだろうが、とにかく臭い。