ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】

――――――結局、俺たちは今、高級レストランを取り囲む湖のほとりに居る。木陰に隠れて店につながる一本道を眺め、侵入する機会をうかがっていた。

那智が「じゃあ俺一人で行く」なんて言うもんだから、それはあまりにも危険過ぎるってことで、仕方なくついてきた。だって、もし那智くんに何かあったら、俺一生後悔しそうだし。

まあ俺なんか、何かあった時には、なんの役にも立たないんだけど。そんな当たり前のことに、ここまでのこのこやって来てから気づいてしまった。

店の場所は地図アプリの航空写真で見つけた。池の中にあるレストランなんか、そうそうあるもんじゃない。

入店チェック係なのか、パツパツのスーツを着たイカつい大男が二人、出入り口に立っていて、入店する客一人一人に隈なく挨拶している。

「那智くん、どうやって入るよ?」

「正面から堂々とってわけにはいかないよね」

「裏に周るにも、あの双子ジャイアンのとこを通らなきゃなんねーじゃん」

「確かに。上手い造りになってんな。あっ」

視力が野獣の那智が何かに気づいた。「なに? どした?」と問えば、

「あれ、龍一くんじゃない?」

と、腕を突き出すと目立ってしまうからか、顔の目の前で店を指さしながら那智が言う。

目を凝らして見てみると、那智さまのおっしゃるとおり、双子ジャイアンの方へ歩いて行く男の後ろ姿が『龍一くん』であった。

あのすらっと縦長なのに筋肉質、完璧な八頭身、薄茶のふわふわした気持ち長めの髪、外出時はいつも着ているダークスーツ、見紛うことなく兄貴だ。

そして、ゴージャスな40代ぐらいの女性をエスコートしていた。細身だが決して貧弱ではない整った身体に、黒のラメラメドレスを着ている。シックだが背中を思う存分露出させたデザインで、スカート丈は地面に擦りそうなのに、パンツが見えそうなところまでスリットが入っている。

「あのおばさん、どっかで見たことある」

と那智が言う。あのフェロモンだだ漏れ熟女も、那智にかかれば『おばさん』の一言で片付いてしまうのか。お子ちゃまだなあ、那智くん。

「どこで?」

俺も那智も、目線は兄貴たちにロックオンしたまま話していた。兄貴たち、どうやら双子ジャイアンに止められている様子。

「どこだっけ……あっ」

「思い出した?」

「そんなことより、今が侵入のチャンスじゃん、行こう」

言い終わる前に那智は潜んでいた木陰から飛び出した。

「ちょっ、おいっ!」

まじかよ、見切り発車もいいところだ。だけど那智だけを行かせるわけにもいかず、仕方なく那智に続く俺。