ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】

とういうわけで、俺たちは辻岡の実家からとんぼ帰りし、昼過ぎには那智のアパートに居た。長浜ラーメンも食べずじまい。

『あさみななこ』という少女は、窪田の手配で、政府や警察などの息がかかっていない安全な病院に入院となった。

那智の部屋でやることといったら一つだ。辻岡の実家で入手したSDカードの中身を見ること。

「やべぇなこれ。これまじでヤバいやつだわ」

那智が『ヤバい』を連発する。こいつの語彙力ってこんなに貧困だったっけ? と不思議に思いつつパソコン画面をのぞき込んだ。

「これヤバいやつだわ、マジで」

結局俺も『ヤバい』しか出てこなかった。

見たこともない高級レストランの外観の写真。おそらく人工であろう池で囲まれたそれ。こちらと店をつなぐ幅数メートルの道が一本だけあり、その両側を背の低い木が緑色に縁どっている。

ガラス張りの店内をズームインして撮影したらしい写真もたくさんあった。名の知れた各界の大物や、警察のお偉いさんまでもが上機嫌で食事をしている。

そして更に拡大された写真には、それら大物たちが、タキシードを着た店員に店の奥へ案内されているところが写っていた。

ここで、なんらかのいかがわしい商売が営まれているに違いない。だいたい想像つくから胸糞悪い。

「これって……辻岡が撮ったのか?」

俺が言うと、那智は「うーん、どうかな」とそっけない返事をする。そして、写真を次から次へと送っていた手を急に止めた。

大量の写真の中に、岩淵のドアップが紛れ込んでいた。撮影者が激しく動いたらしく手触れしている。

撮影していることが岩淵に見つかって、カメラを奪われそうになったようだ。けどこの写真がここにあるということは、無事逃げおおせたのか。もちろん、カメラも死守した。

那智が手振れした岩淵のドアップ写真を目いっぱい拡大する。その瞳の中に、カメラを奪われまいと必死で抵抗する人物が居た。

東郷悦子だ。

殺された理由はこれだ、間違いない。てことは、悦子殺しの犯人は、やっぱり岩淵か。

「だから窪田さん、俺に依頼してきたのか」

「警察の上層部も犯罪に関わってるとしたら、その辺の刑事に安易に頼めねーよな」

那智が駆り出された理由がようやくわかった。

「皆人くん、この店に行ってみよう」

那智が言う。

「ちょっと待て。それはあまりにも危険じゃね?」

「これだけの証拠があんのに? このまま何もせず指をくわえて見てるだけなんて、俺は無理」

「別に指をくわえて見てる必要はないよな? 見なきゃいいんだよ、那智くん」

「またそうやって……皆人くんの屁理屈はもう聞き飽きた」

「俺がいつ屁理屈言ったよ」

「いつも屁理屈ばっかだよ」