「私の妻です」
と辻岡先生は俺たちに奥さんを紹介した。
「その子は?」
俺が訊くと、奥さんの方が口を開いた。
「先日、昴がなんの前触れもなく、この子を連れて突然帰省したんです。この子を預かってほしいと言われました。虐待されていたので保護したと言っていました。詳しくは知らない方がいいと、それ以上は話してくれませんでした。名前は『あさみななこ』ちゃんだそうです。よっぽど怖い思いをしたんでしょう、声が出なくなってしまったようです。なので、書いて教えてくれました」
可哀そうに。一体誰がそんな酷いことを。
「昴は警察も信用できないと言っていました。それで、この子を守るために、わざわざこんなところまで連れて来たんだと思います」
「刑事さん、この子をお願いできますか?」
辻岡先生が言う。この少女が唯一の手掛かりなのか。
「それからこれを」
辻岡先生が俺の右手をすくうように持ち上げ、何かを握らせた。手の平を開いてみれば、ケースに入ったSDカードだった。
「息子に見るなと言われたので、中は見ていません。『実家に行け』とだけ言われたという者が来たら、少女と一緒に委ねて欲しいと頼まれました」
ああだから、実家に行けの一点張りだったのか。
「あの子は……昴は容疑者なんでしょか?」
奥さんがすがるような眼で俺を見て問う。
「いえ。被害者の方です」
俺が答えると、
「怪我でもしたんですか?」
と不安そうに訊く。
「いまのところは大丈夫ですけど、なんらかの事件に関わっているのは否定できないので……警察に出頭して全てを話してくれれば、昴さんの安全を確保できるのですが」
犯罪組織に潜伏中などとはとても言えなかった。
「もし昴さんから連絡があったら、ここに電話するよう説得してもらえないですか」
那智は上着のポケットからペンとメモ用紙を取り出して、自分の名前と携帯電話の番号を書いて奥さんに渡した。
「私たちの言うことを聞くような子じゃないけど」
と奥さんは自信なさそうに言うが、辻岡先生は、
「できる限りのことはやってみます」
と言って、力強く頷いてみせた。
と辻岡先生は俺たちに奥さんを紹介した。
「その子は?」
俺が訊くと、奥さんの方が口を開いた。
「先日、昴がなんの前触れもなく、この子を連れて突然帰省したんです。この子を預かってほしいと言われました。虐待されていたので保護したと言っていました。詳しくは知らない方がいいと、それ以上は話してくれませんでした。名前は『あさみななこ』ちゃんだそうです。よっぽど怖い思いをしたんでしょう、声が出なくなってしまったようです。なので、書いて教えてくれました」
可哀そうに。一体誰がそんな酷いことを。
「昴は警察も信用できないと言っていました。それで、この子を守るために、わざわざこんなところまで連れて来たんだと思います」
「刑事さん、この子をお願いできますか?」
辻岡先生が言う。この少女が唯一の手掛かりなのか。
「それからこれを」
辻岡先生が俺の右手をすくうように持ち上げ、何かを握らせた。手の平を開いてみれば、ケースに入ったSDカードだった。
「息子に見るなと言われたので、中は見ていません。『実家に行け』とだけ言われたという者が来たら、少女と一緒に委ねて欲しいと頼まれました」
ああだから、実家に行けの一点張りだったのか。
「あの子は……昴は容疑者なんでしょか?」
奥さんがすがるような眼で俺を見て問う。
「いえ。被害者の方です」
俺が答えると、
「怪我でもしたんですか?」
と不安そうに訊く。
「いまのところは大丈夫ですけど、なんらかの事件に関わっているのは否定できないので……警察に出頭して全てを話してくれれば、昴さんの安全を確保できるのですが」
犯罪組織に潜伏中などとはとても言えなかった。
「もし昴さんから連絡があったら、ここに電話するよう説得してもらえないですか」
那智は上着のポケットからペンとメモ用紙を取り出して、自分の名前と携帯電話の番号を書いて奥さんに渡した。
「私たちの言うことを聞くような子じゃないけど」
と奥さんは自信なさそうに言うが、辻岡先生は、
「できる限りのことはやってみます」
と言って、力強く頷いてみせた。



