ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】

高広は慎重に言葉を選びながら、けれどそうとは悟られないよう、意識的に無表情を保ちながら、淡々と話した。

「重傷を負った仲間がいる。早急に処置が必要だ」

「重傷?」

「脇腹を刺された。このままじゃ失血死だ」

「放っておけばいい。どうせお前らは捨て駒だろ?」

「そうはいかない。そいつの体ん中に、大量のヤクがある」

男の方もポーカーフェイスを決め込んでいるが、高広が『大量のヤク』と口にした途端、その目が鋭さを増した。

「詳しく」

男が促す。高広は内心でガッツポーズを取りながらも、表面上は平静を装って続けた。

「俺たちは運び屋だ。海外で仕入れたヤクを国内に持ち込むのが仕事だ」

「どこの組のもんだ?」

「それは言えない。最寄りの空港が成田だ。こっからそう遠くない、とだけ言っとくよ」

「信用できねぇな」

「悪いが、これでも一応プロだ。ヘマして消されるならまだしも、易々と口を割って、身内に殺(や)られるのだけは御免だ」

「まあいい、続けろ」


高広はゆっくりと一呼吸し、そうしてから再び口を開いた。

「飛行機ってのは、搭乗手続きが厄介だ」

至極当たり前のことを言う高広に、周りの男たちは呆れた表情を浮かべ、失笑を漏らす者さえいた。

「そこで、だ」

高広は勿体つける様にゆっくりと周囲を見回す。そうしてから、続けて言った。

「俺たちは、腹ん中に入れて、ブツを運ぶ」

「どうやって?」

初老の男が問う。

「いわゆる避妊具ってやつに詰めれるだけ詰めて、それを呑み込むんだよ」

「バカな! 下手したら即死だぞ?」

「下手しなけりゃ、大金が手に入る。一攫千金狙うなら、当然、リスクはつきもんだ。そうだろ?」

高広が同意を求め、周りの男たちを見回すが、その場の空気は、まるで凍り付いたように静まり返っていた。が、初老の男がそれを打ち砕くように、言葉を発した。

「それで?」

「それで……。もちろん、空港の荷物チェックは難なく通過した。けど、いよいよ大金が舞い込んで来るってんで、気が緩んじまったんだな」