ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】

「藤ヶ崎病院を辞める半年前までは、圧倒的に悦子が多いな」

「やっぱ悦子と辻岡は、ただの同僚じゃなかったわけだ」

予想を裏切らない事実に安堵したのも一瞬のことで。


「何だよ、これ?」

病院を辞めた辺りから、着信元の方はてんでバラバラ。だが発信先にずらりと並ぶ同じ電話番号と名前に、思わず自分の顔をモニターに寄せてそれを凝視した。


「あきば……たかひろ……」

秋場高広、兄貴の数少ない友人の一人。同姓同名の別人かとも思ったけど。


俺の異変に気付いた那智が、「知ってるやつか?」と訊いてきた。隠し切れない動揺に強張る顔を、ゆるゆると声のした方に向ければ、至近距離で目が合った。

きょとんとした不思議そうな顔で、俺の返事を待っている。


「ああ……東大出身。ヒゲ(高広)の後輩か……」

思い当たる関係性を、頭に浮かんだままの言葉で一方的に口にして答えに代えた。


「話聞けそうか?」

詳細を問うこともせず、至って冷静なまま間接的に促され、

「ああ、多分」

曖昧に肯定し、またちょっと距離があるけどな、と言い足せば、

「今日はドライブデイだな」

那智は俺の不安を知ってか知らずか、冗談めかして言い、屈託なく笑って見せた。