ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】

「そちらは……?」

視線を那智から逸らすことなく、俺に尋ねた。理沙と那智は本当に面識がないようだ。


「初めまして、芹沢那智です」

那智が愛想笑いっぽい笑顔を張り付け、理沙に向かって右手を差し出した。おずおずとそれを握り返しながら、理沙は躊躇いがちに口を開く。

「ああ、あなたが……。噂には聞いてたけど、本当に……」

目の前の男を呆然と見詰める理沙。その頬にほんのり赤みが差す。


那智ほどの美形はそうそう居ない、それは認めるけど――

――イイ年して、見惚れ過ぎだ。恥ずかしげもなく。


那智がおもむろに、理沙と繋がっている腕をグイと引く。間近に引き寄せられた理沙は、当然驚いて更に大きく目を見開いた。

ほんの少し高い位置から注がれる那智の目線に、敗北したように理沙の方が視線を落として逸らした。


那智の突拍子もない行動はもう見慣れた。けど初対面の理沙は違う。

それでも負けず嫌いで意地っ張りの理沙は、自分から逃げるなんてことは出来ないらしい。じっと床を見詰めたまま、那智が自ら離れるのを待っていた。