理沙が居るはずの花屋は俺のご近所だ。そして、乃亜の職場でもある。
藤ヶ崎病院から二時間弱、車を走らせれば着いた。
入口自動ドアの前には床置き看板。何故だか『準備中』になっている。邪魔くさいそれを横へどかすついでに、裏の『営業中』を表にしてやった。俺って気が利く。
外からガラス越しに見た限りでは、店内は無人だった。俺と那智が自動ドアをくぐって中に入ると、来客を知らせるチャイムが優しいメロディーを奏でた。
途端、店の奥でガタゴト何やら忙しない物音がする。どうも一人が立てたとは思えないそれに、複数――少なくとも二人以上の人間が居ると悟った。
どうせ、今現在理沙を使い物にならなくしている例の男だと、軽く考え大して気にも留めなかったんだが。
「早かったじゃない、皆人」
奥から聞こえた声。僅かに遅れて理沙が姿を現した。が、俺の斜め後ろに視線をやり、ぎょっとしたように息を呑む。見開かれた目は那智に釘付けだった。
どうやら理沙は、俺が一人で来るもんだと踏んでいたらしい。



