ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】

「死を処方する医師、ジャック・ケヴォーキアン」

妙に意味ありげな顔で小さく答えた那智。このガキ、情報を小出しにしかできねぇの? 苛々する。ストレスが溜まる。

つっても、人の名前――医師の名前であることはわかった。


「自殺幇助?」

「まぁそうだけど、ちょっと違う。安楽死。自殺装置を作って、末期癌に苦しむ患者を安楽死させた。実在した医師だ」

「へぇ……じゃあお前、辻岡は癌の末期症状に苦しむ患者を安楽死させたって言いてぇの?」

「それ以外に、彼がその患者を殺す理由があんの?」

「まぁ、無い……よなぁ……」

コンビニの外に設置された筒状の灰皿の上に煙草を持って行き、親指で軽く弾けば、白くなった先っぽがポトリ、ステンレス製の丸い穴の中へ落ちた。

再びそれを口にくわえて思い切り吸い込む。


「末期癌患者の不審死。その直前の悦子と辻岡の言い争い。消えた塩カリ2アンプル」

那智がぼそぼそと小声でキーワードを並べた。視線は目の前の紙コップを通り越し、どこか遠くへぼんやりと注がれている。