いやいや、何考えてんだ…俺は。


今から、そんな心配してどうすんだよ…。


苦笑いをしながら、小春川のマンションを出る。


冷えてきた空気の中を足早に歩いて帰宅すると、携帯の着信が鳴った。


画面に表示された相手は佳織だ。


「もしもし。」


『あっ、律矢?小春川さんに追いつけた?あれから、どうなったか気になったから…。』


あぁ、そうか…。


俺が、小春川の後を追いかける…って言って教室を出たっきりだったから、佳織は何も知らないままだもんな…。


「途中でゆっくり歩いてる小春川を見つけてさ、家まで送った。熱あるみたいで辛そうだった。ゆっくり休んで早く治ればいいんだけどな。」


『……そうだね。小春川さんの家、誰かいた?』


「いや、小春川を送った時は誰もいなかったけど、しばらくしたら小春川のお母さんが、ちょうど帰って来たんだ。」


『そっか。お母さんが帰って来れば、安心だね…。』


「ああ。」


そう言葉を返すと、なぜか…佳織から“うーん”と唸る声が聞こえてきた。