「もしかして、小春ちゃんと何かあった?」


「なっ…」


その名前に即座に反応してしまった俺。


ビクッと肩が大きく跳ねた。


「律矢って、小春ちゃんのことになると、すげぇ分かりやすいな。」


「うるせぇな。っていうか、お前…その小春川に対する馴れ馴れしい呼び方、いい加減にやめろよ。」


「まあ、いいじゃん。俺の中で小春ちゃんに定着しちまったんだし。」


勝手に定着させてるんじゃねぇよ。


イラついている俺をよそに、千景は何やら嬉しそうだ。


「まさか、何かの弾みでケンカしちゃった…とか?」


「は?」


「まあ…付き合ってれば、ケンカの一つや二つ…することもあるさ。だから、あんまり落ち込むなよ。すぐに仲直り出来るって!」


俺の背中をパシッと軽快に叩く千景に眉をしかめる。


「ケンカなんて、してねぇよ。」


自分でも驚くほど低い声が出ていた。


「えっ、ケンカじゃねぇの?」


「違ぇよ。それに、俺と小春川…まだ付き合ってねぇし。」


「………えぇっ、マジかよ!!」


千景の大きな声が、部屋に勢いよく響き渡った。