伊藤先輩は、俺たちの名前をそれぞれの楽器の下に書き加えた。

クラリネットの下に俺の名前が書かれた時、笑いがこぼれるのをおさえられなかった。

先輩がみんなを振り返って言った。

「じゃあ、それぞれのパートの人はいろいろ教えてあげてください」

部屋の空気が一気に動き出した。

この前の吉永先輩が寄ってきて、俺の袖をつかんだ。

「クラリネット気に入ってくれたんだね」

見上げて言うと、俺を引っ張ってドアのそばの机のところに連れて行った。